素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「俺は会社を辞めて起業をしようと思っている」

「え……会社をつくるんですか!?」

「あぁ」


驚く私とは違い橘部長は冷静だった。
ずっと前から悩んで……もう彼の中では答えは決まっていたんだ。

橘部長の人生を応援したい。
その気持ちは勿論あるし、邪魔をする資格もない。

だけど、橘部長がいない会社を考えると……。
胸の奥が焼けるように痛くなる。


「化粧品会社だ。
消費者が笑顔になれる、幸せになれる化粧品を作るのが目標だ」

「え……」


橘部長の目標は私の夢と似ていた。
私がこの業界を目指した理由と……。


「さきも言ったが、俺はお前に一緒に来て欲しい。
泰東が作る化粧品は、温かみがある。
他の奴等にはない化粧品への愛がある」

「橘部長……」


橘部長は私を少し離すと向かい合わせになるように体の向きを変えた。

そして、真っ直ぐに私の目をみつめる。
橘部長は私を必要としてくれている……仕事のパートナーとして。
それは凄く嬉しい事だし、橘部長とだったら私の夢が叶うだろう。


「お前はこの会社が好きか?
俺にはどうしてもそうは見えないんだ」

「……」



確かにこの会社は好きではない。
利益しか求めず、消費者の気持ちを見ようともしない会社。
利益を出した途端に態度を変えて媚を売ってくるような役職者たち。
そんな会社で……私はこれ以上やっていく自信がない。

そんな私の気持ちを見透かしたように橘部長は話し出す。


「消費者の事を第一に考える泰東と利益しか見ていない会社。
その2つが交じり合う事は決してない。
……この事は俺が1番よく分かっている」


橘部長の化粧品への想いも、どんな物を作りたいかという目標も私と同じ。
だからきっと……歩んできた道も同じだったんだ。