素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

それよりも気になる事が1つある。


「橘部長、何で私がカシスオレンジが好きって知ってるんですか?」

「……」


私の言葉は聞こえているはずなのに答えようとはせずに横を向いていた。


「橘部長?」

「……田辺に訊いたんだ」

「え?」

「……泰東の好きな物や嫌いな物を予め聞いておいたんだ。
察してくれ、恥ずかしいだろう」


そう言いながら、照れた顔をする橘部長は、いつもの怖い雰囲気なんてどこにもなかった。
私の事を考えて、わざわざ大樹にまで聞いてくれるなんて……。
橘部長が大樹と話している姿を思い浮かべると、凄く心が温かくなる。


「橘部長」

「何だ?」

「……ありがとうございます!」

「……っ……!そんな事で礼なんて言わなくていい」


素っ気ない言葉だけど、全然哀しくはない。
橘部長が不器用だって知っているから、私は何も怖くない。


「失礼いたします!
生ビールとカシスオレンジですね」

「どうも」

「ありがとうございます!」


店員さんにお礼を言い飲み物を受け取る。


「あっ……」

「え?」

「い……いえ!失礼いたしました!」


先ほどと同じ店員さんは私に何かを言いたそうにしていた様に見えた。
一体なんだったのだろうか?

もういないが、出て行った障子を見ながら首を傾げる。


「……相変わらずモテるんだな」

「え?」

「いや、乾杯するか」

「あっ……はい!」


グラスを持ってば橘部長はゆっくりと口を開いた。


「先日は世話になった。両親がお前の事を凄く気に入っていたよ」

「その事はもう……。本当ですか?すごく嬉しいです!
橘部長のご両親凄くいい方たちで……」

「俺としては気が合いそうで良かったが」

「え?」

「……何でもない」


咳払いをしながら橘部長は一瞬だけ私から目を逸らした。
しかしすぐに私の目を見て軽く微笑んだ。