素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「素敵なお店ですね……」


橘部長が予約を取ってくれたお店について席に着いた時、私は思わず言葉を漏らす。
和をモチーフにしたお洒落な居酒屋。
外観から内観まで全てにおいて、文句の付け所がない所だった。


「気に入ったか?」

「はい……凄く……」


全部個室となっており、人目を気にする事も無い。
今まで来た事がない雰囲気に戸惑いつつも、心はどこか穏やかだ。


こんな素敵な場所で橘部長と2人きりなんて夢みたいだ。


「何をニヤけているんだ?」

「……ニヤ……!?
ニヤついてなんかいません!!」


橘部長は呆れた様に頬を緩める。


「そんなにムキになるな」

「なってません」

「フッ」


橘部長の顔は、明らかに私を馬鹿にしている様なものだった。
だけど、嫌な気持ちにはならない。
どこか温かさを感じるからだろうか。


「泰東」

「はい?」

「俺は……」

「失礼いたします!!
お料理はコースとなっておりますが、お飲み物は何に致しましょうか?」


橘部長が話しだそうとした時、部屋の障子が開き店員さんが入ってくる。
いきなりの事だったので驚いた私は、固まったまま男の店員さんを見つめてしまった。


「あっ……」


すると、だんだん男の人の顔が紅く染まっていく。
それを見た橘部長はコホンと咳払いをした。


「注文していいですか?」

「あ……はい!失礼しました!
ご注文を承ります」

「生ビールとカシスオレンジをお願いします」

「はい、生ビールとカシスオレンジですね?
少々お待ちください!」


男の人は会釈をして部屋を出て行った。
出て行く前に、ちらっと私を見たのは気のせいだろうか?