素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「……すまない、向日さんと一緒に行きたかったよな?」

「え……?」


橘部長は私の方を振り向くことなく喋り続けた。


「お前の許可なく断ってしまったから、悪いと思ってな」


表情は見えないから今、橘部長が何を想っているのかは私には分からない。
でも、橘部長の声のトーンが哀しそうなのは分かった。
何故そんな哀しそうに話すのだろう、理由は分からないが、これ以上は聞きたくない。


「……いえ、私……嬉しかったです」

「泰東?」


自分が口に出そうとしている事は私が1番よく分かっている。
だから、恥ずかしさで声が自然と小さくなる。
でも、これが私の本心だから。
そう思い、深く深呼吸をして口を開いた。


「橘部長がマコさんに、私と2人で行きたいって言ってくれた事……。
凄く嬉しかったです。その……私も……」

「泰東、分かったからもう……」


顔を紅く染めた橘部長は、私の言葉を制止するように話し出した。
でも私は止まることなく話し出す。

橘部長にはちゃんと素直に自分の気持ちを伝えたいから。


「私も橘部長と2人で行きたかったですから」


橘部長の顔以上に真っ赤になった私の顔。
それを見た橘部長は口元を緩めた。
そして、私の好きな優しい笑顔を向けてくれる。


「まったく……あまり大人をからかうのは感心しないぞ」

「からかってませんよ!私の素直な気持ちです」

「……そうか」

「はい」


会話は途切れたけど、嫌な沈黙ではない。
むしろ、落ち着くような空気が優しく私たちの周りを包み込んでいるかの様に感じた。