素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

思い出に浸っていれば体から温もりは消えていった。


「大丈夫か?」

「あ……はい!
助けて頂いて……ありがとうございました!」


橘部長に笑顔を向ければ、それを返す様に橘部長も優しい笑みを浮かべてくれた。


「……そろそろ行くか?」

「……はい」


オフィスには既に私たちしかいなかった。
電気を消してオフィスを後にした。


「……店は予約したが大丈夫だったか?」

「あ……はい!ありがとうございます」


橘部長が予約してくれたお店ってどんな所だろう。
胸が弾みかけた時。


「橘!夏香!」


明るい声が聞こえそっちを向けば、喫茶店から出てきたマコさんがこっちへやって来た。


「どうしたんだい2人して?」

「……食事しに行くんだ」

「え……。2人でかい?」


橘部長の言葉を聞いたマコさんは目を大きく見開いたかと思うと、すぐに悲しそうに目を伏せた。
そんなマコさんの顔を見ていられなくなった私は、マコさんから目を逸らしてしまった。


「あぁ」

「……アタシも一緒に行っていいかい?」

「え……?」


思わず私は声を出してしまった。
そんな私をマコさんは不思議そうに見ていた。


「どうしたんだい夏香?駄目かい?」

「えっと……」


マコさんの事を考えたら断ったらいけないと思う。
だけど、私は……。

胸が痛みかけた時、橘部長の凛とした声がその場に発せられた。


「すまない向日さん、俺は泰東と2人で行きたいんだ。
食事はまたの機会に俺がいない時にでも行ってくれ」


そう言って私の手を掴む橘部長。
そしてそのまま歩き出していった。