素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「いやいや!!
素晴らしいね君たちは!!」

「は?」

「へ?」


社長室に入った途端に、社長は私たちの手を握ってきた。
そして、嬉しそうに顔を緩ませている。

前に見た、社長の態度とは全然違う。
違いすぎて戸惑っていれば、副社長やその他の役職の方もみんな笑顔で見ている事に気が付いた。


「これからもこの調子で頼むよ!!」

「いや~君たちはわが社の宝だ!」

「頑張ってくれたまえ」



次々にお褒めの言葉を頂いて、私たちは社長室を出た。


さっきの光景が未だに頭から離れなかった。
今までクビになる恐怖と闘っていたのに、あんなに褒められるとは……。


褒められるのが嫌な訳ではない。
でも……あの人たちは、会社に利益が入ったから喜んでる訳で、私たちが作った商品を認めてくれた訳ではない。
だからか、少し複雑な気分だ。


そう思っているのは私だけではなかった。
隣で歩く橘部長は眉間にシワを寄せていた。


「ここまで態度を変えられると嫌な気分になるな」

「……そうですね……。正直言って複雑です」


苦笑いを浮かべれば、橘部長は真剣な顔をしていた。
そして、その顔は私の方にと向いた。


「橘部長?」

「……お前は……このままここで働くのが正しいと思うか?」

「……橘部長?」

「……すまない、忘れてくれ」


橘部長は、今……何を考えているのだろうか。
橘部長の顔が真剣すぎて、胸がザワついた気がしたんだ。


何故か不安な気持ちになり、橘部長の横顔を見ていれば視線に気が付いたのか橘部長はこっちを見ていた。


「泰東」

「は……はい」

「来週の金曜日だが予定は空いているか?」

「……え?」


確か何もなかったはず、なんて呑気に考えていれば一気に胸が高鳴る言葉が私に降りかかってきた。



「食事に行かないか?
遅くなってしまったが、俺の見合いをなくしてくれたお礼と、今回のお前の企画成功の祝いに」



そう言いながら、橘部長は優しい顔で笑っていた。