「泰東、決まったか?」

「……はい、私はAランチにします」

「そうか。向日さん、注文を頼む」


私の言葉を確認すると橘部長はキッチンにいるマコさんに声を掛ける。
マコさんは橘部長の声を聞くと嬉しそうに直ぐ駆け寄ってくるんだ。


「はいよ、ってマコでいいって言ってるだろ?」



少し不満そうなマコさんに目もくれず橘部長は注文をする。



「Aランチ2つ頼む」

「……はいよ。
アンタ達いつも同じもの頼むな?」

「……泰東と同じものが食べたくてな」

「ん!?」

「大丈夫か?泰東?」

「……だ……だいじょうぶです」



飲んでいた水が気管に入り、咳き込む私の背中を優しく撫でてくれる橘部長。
心配してくれるのは嬉しいけど、あなたのせいなんですけど。


その言葉を浮かべ苦笑いをしながら橘部長を見る。



『……泰東と同じものが食べたくてな』



橘部長の言葉にはきっと何の意味もないだろう。
それでも……私の心は馬鹿みたいに揺れ動くんだ。



「泰東?どうした?」

「あ……いえ!
そう言えば最近、橘部長よくこちらに来ますよね?」

「あ……あぁ」

「どうしてですか?」



今まで怖くて聞けなかったけど今日は何故かすんなりと聞けた。
それくらい私の心はのぼせているのだ。