「すみません、お待たせしてしまって」
「申し訳ありません、ご迷惑をお掛けしました」
橘部長の腕で泣いたお蔭か少し落ち着いた私は、橘部長と一緒に翔也さんの元へと戻って行った。
そこにはもう、翔也さんしかいなかった。
謝罪をすれば、翔也さんは怒るどころか、私の心配をしてくれた。
「大丈夫?何かあった?」
「いえ……大丈夫です」
翔也さんはこんなにも優しいのに、私はまだ真っ直ぐに彼の顔が見えない。
怖いんだ……彼が今どんな表情をしているのかを見るのが。
また、あの時の。
メイクをしている時の翔也さんの冷たい顔を見てしまいそうで怖い。
「……ならいいんだ。
仕事の話でもしようか」
「……はい」
翔也さんは何か言いたそうに見えたが、すぐに元に戻り仕事の話へと変わっていった。
私は商品のアイディア候補の資料を翔也さんに差し出す。
提案は5つだ。
このうちの殆どが橘部長のくれた資料を参考にして私がアレンジしたものだ。
私と橘部長のアイディアがうまい具合にマッチしていて、今できる最高のものだと言えるほど自信がある。
「あぁ……。
僕は見なくていいよ」
「え……?」
翔也さんは私から受け取った資料をそのまま机に置いた。
少しも見ようとはせずに私の顔を見てきた。
「そう言えば、夏香ちゃんってさ……」
「あの!!」
「ん?」
私は翔也さんの言葉を遮り少し大きな声を出す。
そんな私に嫌な顔1つ見せずに笑顔を見せてくれる翔也さん。
「なぜ……資料を見て頂けないのですか……?」
「あぁ……だってさ」
翔也さんは笑顔を崩さずに言葉を放った。
私が……いや、私と橘部長が嫌う言葉を。
「どんな商品だろうと、僕の名前を出せば売れるでしょう?
だから……見る必要ないでしょ」
笑ったまま人の心をエグる言葉を放つ彼は一体どういう神経をしているのだろうか。
それとも、彼にとっては当たり前の事で悪気はないのだろうか?
「お言葉ですが、私たちは消費者の方が喜んでくださるような商品を作りたいのです。
ですから、メイクアップアーティストである貴方なら消費者の方の気持ちが分かるのではないかと思い、アドバイスをお願いしたかったのですが」
橘部長は無表情のまま言葉を連ねる。
顔こそはいつものクールな顔つきだが、どことなく怒っている様にも見えた。
「申し訳ありません、ご迷惑をお掛けしました」
橘部長の腕で泣いたお蔭か少し落ち着いた私は、橘部長と一緒に翔也さんの元へと戻って行った。
そこにはもう、翔也さんしかいなかった。
謝罪をすれば、翔也さんは怒るどころか、私の心配をしてくれた。
「大丈夫?何かあった?」
「いえ……大丈夫です」
翔也さんはこんなにも優しいのに、私はまだ真っ直ぐに彼の顔が見えない。
怖いんだ……彼が今どんな表情をしているのかを見るのが。
また、あの時の。
メイクをしている時の翔也さんの冷たい顔を見てしまいそうで怖い。
「……ならいいんだ。
仕事の話でもしようか」
「……はい」
翔也さんは何か言いたそうに見えたが、すぐに元に戻り仕事の話へと変わっていった。
私は商品のアイディア候補の資料を翔也さんに差し出す。
提案は5つだ。
このうちの殆どが橘部長のくれた資料を参考にして私がアレンジしたものだ。
私と橘部長のアイディアがうまい具合にマッチしていて、今できる最高のものだと言えるほど自信がある。
「あぁ……。
僕は見なくていいよ」
「え……?」
翔也さんは私から受け取った資料をそのまま机に置いた。
少しも見ようとはせずに私の顔を見てきた。
「そう言えば、夏香ちゃんってさ……」
「あの!!」
「ん?」
私は翔也さんの言葉を遮り少し大きな声を出す。
そんな私に嫌な顔1つ見せずに笑顔を見せてくれる翔也さん。
「なぜ……資料を見て頂けないのですか……?」
「あぁ……だってさ」
翔也さんは笑顔を崩さずに言葉を放った。
私が……いや、私と橘部長が嫌う言葉を。
「どんな商品だろうと、僕の名前を出せば売れるでしょう?
だから……見る必要ないでしょ」
笑ったまま人の心をエグる言葉を放つ彼は一体どういう神経をしているのだろうか。
それとも、彼にとっては当たり前の事で悪気はないのだろうか?
「お言葉ですが、私たちは消費者の方が喜んでくださるような商品を作りたいのです。
ですから、メイクアップアーティストである貴方なら消費者の方の気持ちが分かるのではないかと思い、アドバイスをお願いしたかったのですが」
橘部長は無表情のまま言葉を連ねる。
顔こそはいつものクールな顔つきだが、どことなく怒っている様にも見えた。


