素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

3日後



私と橘部長は有名なスタジオへと来ていた。
今日はここで翔也さんがお仕事をしているそうなので、ここで打合せをする事になったのだ。



「橘さん!泰東さん!
お疲れ様です」

「お疲れ様です」

「お疲れ様です」



翔也さんのアシスタントさん、田丸さんと出会い軽く挨拶を終えると翔也さんの元へと案内をしてくれる。



「すみません、今はまだ翔也は仕事中で……。
良かったら見学して行きませんか?」

「ご迷惑でなければ」

「ぜひぜひ!!」


笑顔の田丸さんに連れられて私たちはある部屋へと入った。


そこには大きな鏡と、たくさんの化粧道具などがあった。
その真ん中では、翔也さんが女性のメイクをしていた。


その姿を見ると、私は何故か胸が痛くなった。
あの時と同じ様に。


翔也さんが公園でメイクをしているのを見た時と同じだ。



彼の顔はあの時と全く同じだった。
独特なオーラを放つ翔也さん。


王子様スマイルを浮かべているのだが、私には……。
その瞳には何も映っていない様に見えた。


女性の姿も、メイクをしている自分も。
心がどこかにいってしまっている。


そんな気がして、少し怖くなった。



「相変わらず格好良いよね“王子”」

「本当本当!!惚れちゃう!!」



周りにいたスタッフの女の人たちが翔也さんの噂をしている。


格好良い……?
確かに普段の翔也さんは格好良いと思う。


だけど……今の……。
メイクをしている翔也さんは……どこか冷たくて恐怖を覚える。