素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「すごい……」



思わず漏れる声が気にならないくらい私は橘部長の資料の世界に引き込まれていった。
化粧品の成分といい、デザイン、カラーリングといい……。
全ての点において消費者の目を引く物となっている。


そこからは、橘部長のお客様を想う気持ちが伝わってきそうだ。
それと同時に、橘部長の化粧品への想いも一緒に。


敵わないな……橘部長には。
そんな想いが私の頭に浮かぶ。


でもいつか……。
橘部長を超えたい、そんな風にも思った。


こんな素敵な物を、いつか私も……。



「夏香……?
どうした……泣いてるのか?」

「え?」



隣から顔を出す大樹は驚いたように私を見ていた。
私はそっと手を頬にあてれば指に水滴がつく。


何で私は泣いているのだろう。



橘部長の商品が凄すぎて悔しいから?
……違う。

自分の才能がなくて悲しいから?
……違う。



橘部長の商品を見ると何故か感動するのだ。
こんな商品があったら私は真っ先に手を伸ばすだろう。


そして……自然に笑顔になれると思う。


私は資料を握りしめながら橘部長を見る。



こんな素敵な物を作れるあなたが……。
こんな所で埋もれていちゃいけない。


橘部長には物凄い才能がある。
だから……。


私は勢いよくパソコンに向かいあう。


私があなたを、あなたの才能を世の中に広めたい。
そして、消費者の皆様を笑顔にしたい。


そう思い、キーボドを打ち始めた。