素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「泰東、知り合いだったのか?」

「知り合いってほどではないのですが……」

「だが、知らなかったんじゃないのか?」

「翔也さんがメイク界の王子って呼ばれてるのは知りませんでした……」




橘部長と話しているうちに、今までの数々の失言が思い浮かぶ。
私って結構、翔也さんに失礼な事をしちゃったかもしれない。


そう思いながらも、態度は変えるつもりはないが。
仕事の時は別として。



「驚いたな……翔也の事を知らない女の子がいたなんて」

「す……すみません」

「いや!謝る事じゃないよ!
そうか……じゃあこの子が……」



田丸さんは、私を見て納得したように笑みを浮かべた。
何の事か分からない私と橘部長はその場で固まっていた。



「そう、この子が例の子だよ。
僕のお気に入り」



王子様スマイルを浮かべる翔也さん。
女の子なら誰でも釘付けにされてしまいそうなその笑顔。


格好良いとは思うが、それ以上の感情は生まれてこない。



「お気に入り……」



私の隣で低い声で呟く橘部長。
心配になり、隣を見ていれば橘部長は私の視線に気が付き少しだけ顔を緩ませた。



「何っていう顔をしてるんだお前は」

「……すみません」



私にしか分からないだろう橘部長の笑顔に胸が高鳴った。
紅まる顔を見られない様に視線を外す、そこには翔也さんがいて自然と彼と目が合った。



「そっか……この人が……」

「翔也さん?」

「……少しこの子借りますね」

「は?」

「失礼します」



翔也さんは私の手を掴み、その場から連れ去られる。
驚く橘部長や田丸さんの顔が見えたが、関係なしに翔也さんは私を引っ張っていく。