素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「橘さん!」

「田丸さん、ご無沙汰しております」

「こちらこそご無沙汰しております」



仮設された控え室に移動をすれば、橘部長と同じくらいの年齢の男性がこっちにやって来た。


橘部長の態度からして仕事関係の人なんだろう。
それくらいしか、分からないが私も頭を下げる。


「あぁ!君が泰東さんか!」

「あっはい、泰東 夏香と申します。
宜しくお願いいたします」

「宜しくお願いします。
私は水沢 翔也のアシスタントをしております、田丸 健哉です」


優しく微笑む田丸さんは、おそらく橘部長と正反対の性格だろう。



「貴方のお話は橘さんから、よく聞いてますよ」

「はい?」

「……田丸さん」




橘部長の制止の声を無視するように私に笑顔をむけてくれる。



「凄く仕事熱心で素質があるって」

「……えっ……」



橘部長の方を見れば、いつもの無表情が気まずそうに歪んでいた。
見ようによっては照れているようにも見える。


“仕事熱心で素質がある”。
その言葉自体ももちろん嬉しいが、橘部長が私の事を話してくれていたって事が本当に嬉しい。



「橘さんは、泰東さんに期待してるんだよ」

「田丸さん、この話はもういいですから」

「そうですね?橘さんには怒られたくないのでやめときます。
それに、そろそろステージが終わる頃ですし……っと噂をすればってやつです」



田丸さんの言葉と同時に後ろから優しい声が聞こえてきた。



「田丸さん、終わりましたよ。
って……夏香ちゃん……?」

「……翔也さん、こんにちは」

「こんにちは……って何でいるの?」



驚いた顔の翔也さんは、先ほどステージで見た儚さはどこにも感じられなかった。
それに少し、ホッとしながらも口を開く。



「お仕事できました」

「仕事……。あぁコラボがどうのこうのってやつ?」

「はい」



2人で話していれば、私たちの隣にいた橘部長や、田丸さんが驚いた顔でこっちを見ているのに気が付いた。