素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「……」

「……」




私と橘部長は2人で電車に乗っていた。
メイク界の王子に挨拶をしに行くためにだ。


それにしても昼間の電車は人が少ないな。
この車両に関しては私たち以外には誰も人がいない。



横並びの席に座りながらちらっと隣に座る橘部長を見る。



それに……どこか気まずい雰囲気を感じるのは私だけだろうか?


さっきから橘部長は黙ったままだ。
それに醸し出す空気が怖い。



この空気の中で喋り出す勇気なんか私にはない。
だからずっと無言の状態で10分くらいが過ぎた。



「泰東」

「……はい」

「……お前はいつもそうなのか?」

「え?」




最初に喋り出したのは橘部長だった。
橘部長は私の方を向き鋭い目つきを私に向けた。



「男とあんなに至近距離で……」

「……もしかして……大樹……田辺とのことですか?」

「あぁ」



橘部長はそれだけ言うと私から視線を外し、窓の外を見てしまった。
微かに見える横顔は、どこか哀しそうに見えたのは私の気のせいだろうか。



「田辺とは大学時代の同期なんです。
なので気心が知れていると言いますか……」

「同期だろうが男だぞ」

「そうですけど……」



大樹をそんなに意識した事ないから深く考えてなかった。
でも、おかしい事なのだろうか?



「田辺だけじゃない。
佐藤とも、他の奴らともだ」

「……もしかして橘部長……妬いてます?」




冗談のつもりだった。
そんな訳がないって分かっているからだ。


それなのに……。



「……っ……!!」



橘部長の横顔が紅く染まったのが分かった。
もしかして図星……なの?



「橘部長……?」

「……とにかくだ、お前はもっと警戒心を持て」

「……はい」



もっと詳しく聞きたかったけど、現実を知るのが怖い私は何もせず逃げ出した。