素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「泰東」

「はい」


沈黙を破ったのは橘部長だった。
資料室に響くその声は私の胸まで響くような低い声。
でも嫌な低さじゃなくて心地の良い感じでどこか落ち着く。


「お前が今回の企画で作った資料を全部俺のデスクに置いておいてくれ」

「どういう事ですか……私が作ったやつは前部長に見せて不採用になりましたけど……」

「そんなのは関係ない、置いといてくれ」

「は……はい」


よく分からないけどとりあえず頷く私。
私が頷いたのを確認して橘部長はそのまま資料室を出て行った。
……何だったんだ今のは……。
いきなり来たと思ったら帰るのもいきなりだし……。
しかも橘部長の考えてる事よく分かんないし。

何でボツにされた資料を持ってこいなんて言ったんだろう?
まぁいいか……。
私は考えることを止め再び片づけを始める。