素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「橘部長は今……凄くお仕事を頑張っています!!
あんなに仕事熱心で一生懸命な人見た事がありません!!
お2人の心配も十分に理解してます……でも橘部長ならきっと素敵な人を探すはずです。
だから……」



自分の言葉が自分の胸を苦しめる。
橘部長はいつか本物の彼女をここに連れてくる。


そして……この優しいご両親に祝福されて素敵な家族になっていく。
でもそこには私はいない。


そう思うと涙がこぼれ落ちそうになる。




「だから……。
今は……橘部長の好きにさせてあげてください……。
お願いします……」



涙を堪えて頭を下げ続ける。




「夏香ちゃん……。
もう……頭を上げてよ……やめて……?」



掠れた声が私に向けられた。
驚いた私は思わず頭を上げる。


そこに映った光景を見た瞬間、私は更に驚きに包まれた。




「どうして……泣いてらっしゃるんですか……?」




私の目には涙でいっぱいになったお母さんの顔が入ってくる。
その隣でお父さんも目を真っ赤にしていた。



「夏香ちゃんがどんな気持ちで私たちに接してくれてたのかを考えると……。
凄く辛くて……ごめんなさい……早く気が付いてあげられなくて……」




そう言って涙を流すお母さん。
何故そんなに優しいのだろう。


お母さんが謝る理由なんてどこにもない。
それなのに……。



静まる部屋の中に優しい声が響き渡った。

それと同時に私の頭に温もりが与えられる。




「夏香ちゃん……。
慎吾にはお見合いはさせない。
アイツの好きにさせてやることを約束する」



その声の主はお父さんだった。
お父さんは私の頭を優しく撫で、柔らかい笑みで私を見る。


その優しさに、声に、表情に。
私の胸は熱くなった。