素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「……」

「……」




気が付けば橘部長のご両親が満面な笑みで私を見ていた。




「あの……」

「夏香ちゃんって本当に慎吾の事が好きなのね」




嬉しそうに顔を緩めながらお母さんは言葉を発した。

その言葉に一気に私の頬は熱を帯びる。


もしかして私……とんでもなく恥ずかしいことを口にしたのでは……。
後悔先に立たずとはこの事だ。



戻せない言葉に後悔しながら顔を紅める私。




「その……」

「あなたが慎吾の彼女で本当に良かったわ!!」




お母さんの言葉が、嬉しそうな表情が……。
私の胸を締め付けた。



「っ……」

「夏香ちゃん……?」




さっきまで微笑んでいたご両親の顔は、心配そうな顔に変わっていた。




このままでいいのかな……。
頭の中がそれでいっぱいになる。


私はこんなにも心の優しい人を騙している。
その罪悪感が私を包み込んで離さない。



私は橘部長が好き。
その気持ちは変わらないし、橘部長の役に立ちたいと想う気持ちも勿論ある。



でも……。
でもこのままでは駄目な気がする。



……橘部長の大切なご両親に……。
これ以上……嘘はつけない。


だって……橘部長が教えてくれたから。
自分の気持ちに素直になる大切さを。


だから……。
すみません……橘部長……。