素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「泰東……お前も呼んでくれ」

「……はい?」

「俺だけなんて不公平だろう?」




一瞬、橘部長が言っている意味が分からなかった。
でも、すぐに分かった。


つまり……橘部長の事を名前で呼べと……。
私も同じ恥ずかしさを味わえという事だろう。




「それいいいわね!!」

「慎吾!お前いい事いうなー!」




お母さんもお父さんも大盛り上がりしているこの状況で……。
呼ばないで入れる人間がいたら今すぐ連れてきて欲しい。



少なくとも私はそんな度胸のある人間ではない。
だから、震える唇をゆっくりと動かした。




「し……慎吾さ……ん……」




名前で呼んだ。
……たったそれだけなのに私の心臓は壊れるくらいに騒ぎ出していた。


恥ずかしくてどうにかなりそうな気持ちのまま私は橘部長を見る。




「えっ……?」



思わず声を漏らす私。
だって信じられない光景が目の前にあったから。



これでもかってくらいに……顔を紅く染める橘部長の姿が私の目に映った。





「あら~?
慎吾も照れてるの?」

「いい歳して……まだまだ子供だな!!」




お母さんとお父さんにからかわれながらも何も話そうとしない橘部長。
その顔は余計に紅くなっていた。



もしかして本当に照れてくれているのだろうか……。