素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

資料室に籠って1時間。


ようやく資料の整理が終わろうとしていた。
手は片づけでいそいそと動くけど私の頭はさっきから停止したままだ。


さっきの橘部長の企画書が頭から離れない。
胸の中の何かがざわざわと動いている。
それがなんなのかは分からないけど、でも今物凄くアイディアがたくさん浮かぶ。
作りたい……企画書を……。



「泰東」

「え……?」



低い声が聞こえ驚きながらも私は体の向きを変える。
目の前にいるのは鋭い目つきをした男の人。
さっきまでその人の事を考えていたからか激しく心臓が動く。
正確に言えば考えていたのは“その人の企画書の事”をなんだけど。



「橘部長……」

「こんな所で何をしてる?」

「し……資料の整理をしてました」



朝の一件もあって橘部長と話すのは少し緊張する。
また何か言われるんじゃないかって、今度は仕事を辞めろと言われるかもしれない。
身構えていれば橘部長の眼鏡の奥の瞳が私の視線と交わる。



「ハァ。別に取って食おうなんて考えていないから安心しろ」

「……へ?」

「……」



橘部長の言葉が理解出来ず首を傾げれば部長はゴホンと咳払いをして何も話さなくなる。