素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「馬鹿な事を言うな。迷惑しているんだ」

「……そんな事を言ったら皆さんが可哀想ですよ」




橘部長の言葉は私の胸を鋭く刺した。
“迷惑”そのひと言は私に言われたも同然だ。


だって……私もあの人たちと同じだもん。
橘部長を好きって気持ちは変わらない。




「泰東……?どうした?」

「いえ、何でもないです」





橘部長にとって私はただの部下だ。
だから、たまに見せてくれる優しい笑顔も態度も特に意味はない。


そんな事は分かっている。
分かっているのに……どうしてこんなにも胸が痛いのだろう。





「ならいいが……」

「心配かけてしまってすみません。
あっ……そう言えばさっきなんて言ったんですか?」




女の人たちの騒ぎ声で聞こえなかった言葉を尋ねる。

すると、橘部長は気まずそうに顔を顰めた。




「……何でもない。そろそろ行くぞ」

「え!?気になるじゃないですか!?」




とっさに出た言葉がこれだった。
私の声に反応するように橘部長はピタリと止まる。


しかし、私の方を見ることはなかった。




「橘……部長……?」




恐る恐る背中に声をかける。
でも沈黙だけが私を包み込んでいた。



もしかして怒らせてしまったのだろうか。
不安が頭をよぎった時、低い声が静かに路地裏に消えていった。





「綺麗だ」




短い言葉。
でもそれは、私の頬を紅らめるには十分すぎた。