素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「翔也……さん?」





記憶を辿って口にすればニコッと効果音がつきそうな笑顔が返ってきた。





「そうだよ。
名前……覚えててくれて嬉しいな」





翔也さんはそう言うと私の手を掴んでいる男を見据えた。
そして彼の甘いルックスから似合わない低い声が発せられる。





「その手を離してくれる?」

「お前……メイク界の……」




男が何かを言おうとした瞬間
翔也さんは男の手を無理やり私から離す。




「余計な事言わないでくれるかな?
君はさっさと元の世界に戻りなよ。
君にとってこの子は高嶺の花だ」




早口で、でもしっかりと言うと翔也さんは私の手を掴んだままその場を歩き去る。