素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「飲みます……絶対!」

「……あぁ」




私が意気込めば橘部長の目元が緩む。
良かった……怒ってないみたい。




「泰東、手を出せ」

「え?」

「早くしろ」




いきなりの事に戸惑いながらも右手を出す。
すると橘部長は自分の右手を私の手に重ねてきた。




「え!?」




これはいわゆる握手……?
でも一体何で……?


橘部長の手が私の手と重なっている。
そう考えるだけで緊張する。



ドキドキと煩い鼓動の音が橘部長に聞こえないか心配だ。



ゆっくり橘部長の手は動き私に拳を作らせる。
ぎゅっと握ったその手の中に何かがあるような気がした。





「それで口直しするといい」




橘部長はそれだけ言うと私に背を向けて行ってしまった。



口直しって……。
手を開ければそこには透明の袋に包まれていたチョコレート。




……橘部長とチョコレート……。
あまりにもかけ離れているからか可笑しくなってきた。



橘部長……意外に甘党だったりして……。


チョコレートをコーヒーの隣に置きそっと眺める。