変な橘部長。
大丈夫かな……?



心配になりながらも私は橘部長が持ってきてくれたコーヒーに目を向ける。
独特の深みのある香りがオフィスに漂い、そして全てを呑み込む様な黒い色が私を見つめる。




「うっ……はぁ……」




軽く目を逸らしタメ息をつく。
どうしよう……。




「あれ?
夏香がコーヒーとか珍しいな?」

「う……うん」




大樹は私のデスクに置いてあるコーヒーを見るなり目を丸めている。
それもそのはず……私はいつもコーヒーではなく紅茶を飲んでいる。
だから私のデスクにあると少し違和感がある。




「ってか……夏香ってコーヒー飲めたっけ?」

「……」

「……何飲めないのに持ってきたんだよ……」




私の顔を見てタメ息をつく大樹。
何よ……まだ飲めないって言ってないのに!!



……まぁ飲めないんだけどね。
だって……苦いんだもん……。




「間違えたのか?」

「いや……その……」

「俺が代わりに飲んでやるよ」




そう言って伸ばされた手。




「ダメッ!!」




私は咄嗟に叫んでいた。