素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

佐藤せんぱいは皆の輪の中には入ろうとはせず、ただ無表情のままその輪を見ていた。



……あんな佐藤せんぱいは見た事ない。
いつも優しい笑顔を浮かべていたから……ちょっと怖い……。



そう思いながらも佐藤せんぱいを見ていれば視線に気づいたようにこっちを向いた。
そして笑顔を浮かべ私たちの方に近づいてくる。




「夏香、良かったな!
アイツらの誤解も解けてまた元通り仲良くなれて」




目を細めて笑う佐藤せんぱいは優しく私の頭を撫でてくれる。
佐藤せんぱいにもたくさん心配かけちゃったからな……。




「ありがとうございます。
佐藤せんぱいのおかげですよ!
先輩が励ましてくれたから私は笑顔のままここまで来れました!」

「夏香が頑張ったからだろ?」




本当に優しい人だな……。



そう思っていれば橘部長がいきなり私の前に割り込んできた。
ビックリしていれば聞きなれた低い声がオフィスに響き渡った。




「佐藤、何故あの時資料を総務課に届けなかったんだ」




橘部長の言葉で騒がした空間が一気に静まりかえった。
皆の視線が佐藤せんぱいに向けられている。




「俺が届けようとした時には既にありませんでした。
だから誰かが届けたのかなって」




佐藤せんぱいが答えればみんな納得していない様に顔をしかめた。