素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「泰東、自分の気持ちを素直に言え。
逃げないで真っ直ぐにぶつかれば相手も自分のした事の重大さに気付くだろう」




自分の気持ち……。
別に……そんなの……。



私は橘部長から目を逸らそうとする。
でも、その動きは途中で止まった。



私はいつまで逃げているの?



先輩たちの事だって……。
私がはっきりと自分の気持ちを伝えていれば直ぐに悪口とかが無くなってたかもしれない。
殺気の事もちゃんとその時に対処していれば今回みたいな事を防げたかもしれない。


結局全部……私が逃げ出した結果だ。



1歩踏み出さなきゃ……。
もう2度と同じ事を繰り返さないように……。




「橘部長……ありがとうございます。
私……素直になってみます」




私が言えば橘部長の口元が少しだけ緩んだ気がした。
橘部長から目を離しグルッと1人1人の顔を見て私は口を開く。



仲間を疑いたくはない。


でも橘部長が教えてくれた……。
仲間だからこそ向き合う大切さを……。




「私は今まで……ずっと逃げてきました」

「夏香……?」




私が言えば皆は思い思いの顔で私を見ている。
不思議そうな顔の人、泣きそうな顔の人、心配してくれているような顔の人。



皆に見られて少し緊張するけど……。
勇気を出して話し続ける。