素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「橘部長だったんですね……」


あぁ……。
馬鹿だ私、恥ずかしすぎる!
よりにもよってこれから一緒に仕事する人にあくびを見られるなんて!!



「あぁ。少しは女だという事を意識したらどうだ。
見たのが俺だからよかったものの……」



何か仕事じゃないところで説教をされてるのですが……。
前の部長でもそんなこと言わなかったのに!!
恥ずかしさを超えて怒りに変わってきたのですが!!



「すみませんでした。 以後気を付けますので」

「あぁ」

「下がってもいいですか? 企画書を直さなければいけないので」



私が言えば、部長の眉間にシワが寄ったのが分かった。
怒ってるよね……?
でもその理由が私には分からないんですけど……。



「泰東、資料は直さなくていい」

「どうしてですか!?」

「無駄だからだ」



無駄……。
そんな事をハッキリ言われると流石に……辛い……。



私は拳を握りしめて、無理やり口角をあげて笑顔を作る。
部長を真っ直ぐに見据えて口を開く。



「分かりました。どうせ私には企画の才能なんてありませんから」

「はっ?……おい……!」



橘部長は何かを言おうとしたけど私はそのまま背中を向けて自分のデスクに向かう。