素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「橘部長……?」

「お前は総務課に資料が渡っていないと知った時も
データーが無くなったと知った時も全く怒った表情をしなかった。
誰かが故意にやったという事は明らかであるのに」

「ひゃ……」




そう言ったと同時に私の体は橘部長によって向きを変えられていた。


カランカランと音を立てて口紅が私の手から落ちる。


いきなり真正面に立っている橘部長。
私の両肩には橘部長の手がガッシリと置かれている。




「どうして怒らない?」

「怒るも何も……。
私が前もってデータを気にしていなかったのがいけないんです」




他の仕事が忙しくてフォルダーの中まで確認しなかった私も悪い。
ちゃんと確認しておけばもっと早く気付けた。
だから誰かのせいだけにするのはおかしい……。




「だからって人のデーターを消すなんておかしいだろう!!
泰東は悔しくないのか!?」




初めて聞く橘部長の怒鳴り声。
こんなに感情を表に出すところを見たのは初めてかもしれない。



でも橘部長?
1つだけ間違ってますよ……。