素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「全く……」




橘部長は深くため息をつくとどこかに電話をし始めた。



私は不思議に思いながらも手は止めない。
何しろ時間がないのだ。
明日の会議は朝からだし……。
今はもう夜の7時近く、とにかく急がないと!!




「もしもし、企画開発部部長の橘ですが、総務課の西山課長ですか?
あのですね、明日の会議の資料の事なんですが
こちらの方で対処しますのでもうお帰りになって下さい。
……はい、すみませんでした。ノー残業デイなのに……。
はい、はい、失礼します」




そう言って電話を切る橘部長。


今……こっちの方で対処するって……。
私は驚きながら橘部長の方に顔を向ける。




「何をこっちを向いている。
早く手を動かせ、間に合わなくなる」

「間に合わなくなるって……やっていいんですか!?」

「はぁ……。
諦めたくないんだろ?
だったらやるしかないだろう」

「橘部長……」




私は自然に笑顔を橘部長に向けていた。
橘部長は……やっぱり……。



優しい人だ。