素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「記憶を辿って作ります」

「馬鹿を言うな!!
あんな量を全て覚えているはずがない」




確かに全部は覚えていないし……。
それに時間もない。



私はパソコンの画面から目を離すことなくキーボードに手を走らせる。
そして泣きたくなる衝動を抑えるために無理やり口角を上にあげる。



でも……。




「諦めたくないんです。
最後の最後まで足掻かせてください」

「っ……」

「橘部長が私にくれたチャンスを無駄にしたくないんです」




ここまで頑張ってきた。
橘部長や大樹、佐藤せんぱいや部長。


あの口紅は私1人で作り上げたものじゃない。
皆のおかげでやっと作り上げた、皆の想いが集まって出来た口紅。


だから何としてでも……。
作り上げたい。
例え会議で他の人たちに反対されたとしてもいい。
だけど……勝負しないで逃げる事だけはしたくない。