素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

データーが残っていればプレゼンの資料を作り直すだけで済む。
そんな願いさえ打ち砕かれた。
橘部長は静かに首を横に振る。



っ……。
どうすれば……。
橘部長のデーターまで消えているって事は誰かが故意に消したという事。
おそらく大樹と佐藤せんぱいのパソコンのデーターも消されているだろう。



私はふとデスクの引き出しに入れてあるUSBの存在を思い出した。
ココにもデーターを入れておいたけど……。



USBをパソコンに繋げて中を確認する。


お願い……残ってて。
心の中で強く願うがそんな希望さえ踏みにじられた。
パソコン同様に空のフォルダーが私を嘲笑うかの様に残っている。




「誰がこんな事を……」




橘部長の恐ろしく低い声がオフィスに消えていく。


……1つだけ思い当たる節がある。
誰だかは分からないけど……時々、私に向けられていた殺気。
多分その殺気を送っていた人がデーターを消したんだろう。


私は軽くため息をつきながらパソコンと向かい合う。




「泰東……何をやっている?」

「今から作り直そうと思いまして」

「な……!!
データが全部消えているんだぞ!?
一体どうやって……」




橘部長は信じられないといった感じで私を見ている。