素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

「何!?」




橘部長の大声にそっちに顔を向ければ眉間にしわを寄せながら何とも恐ろしい顔をしていた。
橘部長の顔を見るからに良くない事が起こったのには違いない。



まさか……。




「明日の会議に使う資料が総務課に届いていないそうだ」




電話を終えた橘部長は頭を抱えながら言う。
あぁ……嫌な予感が当たってしまった……。



奥歯を噛みしめながら下を俯く。


どうしよう……。


総務課に資料が届いていないと言う事は会議の時に使う資料が印刷されていないと言う事。
このままじゃ会議で化粧品の発表すらできない……。




「泰東、もう1度資料を出してくれ」

「……それが……今回の企画の口紅のデーターが無くなっているんです」

「なんだと!?」




橘部長は急いで私の方に駆け寄ってきてパソコンを覗き込む。
そこには空になったフォルダーが虚しく表示されている。




「どうしてこんな事に……!!」

「橘部長のパソコンにはデータは残っていませんか?」

「そうだ」




橘部長は自分のデスクに戻りパソコンを確認している。
今回のプロジェクトをやるにあたって口紅のデーターは橘部長と大樹、佐藤せんぱいに渡していた。
だから誰かのパソコンにデータが残っているといいんだけど……。