素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~

そして金曜日になり明日はいよいよ会議だ。
今は午後5時を過ぎており、オフィスにはもう人はほとんどいなかった。
私と橘部長以外は……。



本当なら金曜日は残業をしてはいけないという会社の決まり……。
名付けて“ノー残業デイ”なんだけど……。
明日は会議と言う事もあり特別に会社から許可を貰って残業することに。



私はプレゼンの練習でもしようと今回私が作った口紅のデーターが入っているフォルダーをクリックする。




「えっ……」




私は自分の目を疑わずにはいられなかった。
だってフォルダーに入っているはずのデーターが全てなくなっていたから。
私は思わずパソコンを両手で掴むようにして画面を覗き込む。



どうして……!?
何でないの!?




「泰東?
どうし……はい、企画開発部の橘ですが」




橘部長の言葉を遮るようにオフィスの電話が鳴り響いた。
電話に出る橘部長をよそに私の体は震えていた。



何か物凄く嫌な予感がする。
震えを抑えるため私は自分の両手で体を抱きしめる。