鈴が咲く【前編】






走馬灯のように記憶が頭の中を駆け巡った




どうして。
どうして忘れていたんだろう。


私に鈴の名をくれた人
私を“私”として見てくれた人
私の唯一無二の相棒で
私があの場所で信用していた数少ない人






……っ!!


感極まって声が出ない



体から力が抜けて
ペタンと地面に座り込む。


名前を呼びたい。
駆け寄りたい。
もっと顔を見たい。


なのに口がパクパクと動くだけで
足に力は入らなくて
視界がぼやけてくる





「っ!!」

視界がぼやけて溢れそうになった瞬間。



肩から背中へと回った力強い腕が
私を抱きしめた。




「っっ…とぅ、ま………!!」


震える声で
聞こえるかわからないほどの小さい声で
名前を呼ぶ


「待たせてごめん。
…ただいま、鈴」