走馬灯のように記憶が頭の中を駆け巡った
どうして。
どうして忘れていたんだろう。
私に鈴の名をくれた人
私を“私”として見てくれた人
私の唯一無二の相棒で
私があの場所で信用していた数少ない人
……っ!!
感極まって声が出ない
体から力が抜けて
ペタンと地面に座り込む。
名前を呼びたい。
駆け寄りたい。
もっと顔を見たい。
なのに口がパクパクと動くだけで
足に力は入らなくて
視界がぼやけてくる
「っ!!」
視界がぼやけて溢れそうになった瞬間。
肩から背中へと回った力強い腕が
私を抱きしめた。
「っっ…とぅ、ま………!!」
震える声で
聞こえるかわからないほどの小さい声で
名前を呼ぶ
「待たせてごめん。
…ただいま、鈴」

