鈴が咲く【前編】
















片腕を突き出したまま、
俯きがちに目線を下にしていた“そいつ”は


『っ……』


何かを払うように手を振って


『おい…』


ゆっくりとその手を下ろした。





俯いていたせいで黒髪に隠れていた目と
目が合った。
そのまま顔を動かして真正面から私を見据える“そいつ”


『っ…!!』



さっきまで向かってきていた敵軍は
みんな“そいつ”の後ろで片膝をついて
下を向いている。




「…久しぶり、鈴。」


どこか悲しそうな微笑を浮かべて
私の名を呼んだ



“そいつ”
















北側から聞こえてくる戦闘音が
水の中にいるかのように遠く感じた