「今日はありがとね!」

「今度また作ってくれやぁ?」


ドアまで四人を見送って、
ニコッと手を振る。


「うん、もちろん!
おやすみ~」




みんなが手を振り返しているのが
徐々に締まる扉で遮られた。



「ふぅー...」

完全に扉が閉まったのを確認して
長く息を吐いた。




―――カチリ

息を吐いたのを合図に、
キャラクターのイメージを止める。




片づけをさっさと終わらせて
おふろにはいった。
















まぁ大体は演じられるな……



天然で無自覚な
少し子供っぽい感じのキャラクター……
天然発言かまして
相手が勝手に照れるようなこと
やってもいいかも。








そう思いながら髪を乾かして、
荷物の中から和紙と筆を取り出す。






「ほんと、平和ボケしすぎでしょ...」

当主の私が、
...御老主達に実権をほぼ握られて
いいように扱われてるとしても
腐っても一族の当主である私が、
この学園に転入なんて手を使ってまで入れられたのに。

そんなレベルになるほど、もう妖たちが
出没し、危険があるということだろうに。


一般人のあの三人はともかく...

「変わってないね、翔。」



あんたは、一族の一員でしょうに…!




「っ...」



本当……
シアワセな世界に生きてるよ、みんな。

私の苦労も何もかも知らないくせに
表面だけ見て私をねぎらい気を使う。


くっだらない……偽善者。





あぁまずい...

すぅ、っと感情を抑えて意識を集中させる。



護符や札は、自分の霊力を込めて一枚一枚作るもの。

少しでも邪気を入れたら
その効力は落ちる。


妖との戦いに少しでも隙があっちゃいけない...











夜も更けた月夜。
電気の消えた部屋の中で一人、
窓下に置いた机に向かう。

私を照らすのは、
窓から差し込む月の光だけだった。