鈴が咲く【前編】

「なぁ...咲。
俺の好きなもの、...覚えてたのか?」




...は?
そんなこと?

「あたりまえじゃん!」

「そっか...そっか。」


そんなことすら覚えられないで
一族で御老主のご機嫌取りなんかできないって...




嬉しそうな顔をした翔が
一気に食べ始めたのと反比例するように
遠山君と関石君の箸のスピードが弱まる



「......いーなー、翔。
咲ちゃんに好きなもの、作ってもらって...」


まさか...

「そうやで、
このハンバーグ、翔の好物やろ?」



早かったな...
もう結構馴染めてんじゃん、私。




「ハンバーグ...好きじゃなかった?」

悲しそうに眉を落として二人に問いかける。




「いや...
そういうことやなくてやな..」

「僕も咲希ちゃんに好きなもの、
作ってほしい~!」


駄々をこねるように言った遠山君に
思わず笑ってしまった。