鈴が咲く【前編】






おかしい。


「なぁ…?
さっきっからおんなじとこ
歩いてるようなきーするんやけど……」



そう。


歩いて10分もかからないはずなのに、
木ばっかりで別荘につかない。

みんな口には出さなかったけど
誰もが感じていたことだった。



「っ…燈兜……咲……!」


呟きながらまだ前に進もうとする翔。


「翔太。やめろ。
無駄な体力消費だ。」

立ち止まって木に
背を預けた龍がそう言う。



龍の言うことは、
こんなときでも的確で的を射ている。

落ち着いていて、冷静だ。




「っ…」

立ち止まった翔。

「まさか……楽しむがいい、って…!」


そう、声を呟くようにあげた。


「っ…最初から結界が張ってあった…?
完全復活を遂げて、
俺らじゃっ…俺じゃ、もう
太刀打ちできないってか…!?」


「翔太!
落ち着けよ。」


龍の声で動きが止まった。


「なぁ、
俺らの中でわかるのは翔太だけだ。
どうすればいい?出来ることはあるのか?」


「……燈兜は、俺が前見たとき、
完全な力じゃなかった。それでも咲と互角だった。
本当は咲以上の力を持ってるんだ…

紅竜レベルの物を……」

小さくそう呟いて続ける。

「ヤツがどれだけの力を
持ってるかわかんねーけど…
出来ることがあるとしたら、
結界の切れ目を探すこと。

俺は咲みたいに
結界強制変化とか相殺とかできねーし…」


「結界の、切れ目…?」

康平が聞き返す。

「あぁ。
どれだけの範囲結界張ってるか
わかんねーから何とも言えないが…
結界を張っている範囲は限られてる。
結界でいう一番端の所は、結界の外と一番近い…
つまり、結界の切れ目となる場所があるはず。

その切れ目が大きかったら、
俺でも外に助けを呼んだり、結界を抜け出せるかも…」



「じゃあ、どうやって探すんだ?」


龍の問いに顔を曇らせる。

「俺はどうにかなる。
でも…お前らは………」



また、足手まとい。



そう現実を突きつけられた気がして
うつむいた。



「!」


ハッ、と目にはいったのは
咲希ちゃんからもらった鈴。


「翔!
これ、この鈴、使えない?」