柳side


『夜召、楚宙。

この後なんかあるか?』


咲が部屋に入って少し。


咲を罵倒する声が中から聞こえる。


顔をしかめて障子を、
もっというとその中をにらんでいる二人に
そう問いかけた。




『っいや...特には...』

『..これといった命もないから...』


にらんだまま一言も発しなかった二人が
ハッと意識を戻してそう返事をした



『...この後.....
多分、咲自分でも気づかないまま、
傷ついて来ると思うんだ。』



そう。

咲はいつもそうだ。

自分の意思を強く持っていて、
御老主達の罵倒や嫌がらせにも
屈せずに凛と立っている。
責任感があって、全部自分のせいにしてまで
誰かを助けようとする。


でも。
自分に傷ついていないと言い聞かせながら
本当は傷ついている。

しかも自分でそうしていることに気づいていない。


翔太に引け目を感じているのも。
羨ましいと感じていることも。
弱さを見せないようにしていることも。
御老主の言葉に傷ついていることも。

咲にとってこの聖林の一族の
大部分の人々の態度が
苦しく悲しく辛く
傷つく原因になっていることも。



自分では、自覚していない事だった。


『咲に、俺らが気を使っているとわからせずに、
励ます方法が欲しい。
前みたいに、手合わせしようかと思ってな』



『いいな、それ』

『賛成だ。』

楚空も夜召もそう返事を返してくる。

『後で、念を送る。』





そう言ってから
罵倒する声と咲の謝る声を背に歩きだした。

柳side end