鈴が咲く【前編】

光輝side

「あれは...?
さ、きちゃん...?」

いつもと、違う姿。
あの声。
冷たい、
見下したような...声

何かに、
激怒していた...?



「俺...
あんな咲希ちゃん、
初めて見たわ」

康平がつぶやいた

「俺だってそうだよ...」

髪をおろしていた咲希ちゃんも。
あんなに怒っていた咲希ちゃんも。
あの声も。あの姿も。
あんな行動も...

あんなの...
初めて見た。





「...お前らも、
『見えて』たんだな」

龍也がさっきまで「アイツ」
がいた場所を見ながら言った。

「あぁ」

「ガキん時から見えてたよ...」


でも...あの二人は...?
『見えてる』だけじゃ、ない...?


「っ戻るぞ。
翔が倒れたまんまだったはず...」

ハッとしたように言った龍也。

全員が、
咲希ちゃんたちが出て行った
窓を見つめる。

ここから、
校舎の二階、屋上、別館屋上...
普通はあり得ない。




「行こう。
早く寮へ戻ろう」

そう言って、
ドアの近くで立ちすくんでいた
足を無理やり動かして走り出す

後ろから二人もついてきた。

俺達は、
寮に着くまで
走り続けた

光輝side end