鈴が咲く【前編】

「っ...
キヨ!翔は!?」

『はい。
傷口は問題ありません。
体内に今の妖の邪気、妖気が広がっています。
広がることを食い止めるので精いっぱいの状況です』


「わかった。お疲れ様。
ひとまず下がって。
ありがとう」

『はい。失礼します』

キヨがいなくなった翔の隣に座る。



「っは...
ぅっ...はっ...」

不規則な呼吸。

「翔...」

すぐに戻らなきゃだめか……
ここで受け取るには私のリスクが高すぎる

「さ、...咲希ちゃん?」

恐る恐る声をかけてくる。



「っ!!
ごめん、後で説明する!
ひとまず寮に戻るから!」

いつものいい子チャンなセリフを吐いて
踵を返した。



「あ、あぁ...」

「柳!」





『...ん。わかってる。
先連れて行くぞ?』

「私も同じスピードで行く。」

『わかった。
...らしくねーなぁ翔...』

翔に話しかけながらしゃがみこむ柳。


シュッ...
手刀を振って3人に張っていた結界を解いた。

「みんな...
ごめん。
後で説明するから...」


弱ってるフリ?
困ってるフリ?

そんな態度を見せて。








『咲。行くぞ』

翔を担いだ柳が立ち上がる。


部屋の窓から飛び出す。
霊力を使って飛んだ。

寮の最上階、特別寮まで
建物を経由して向かって行った。