近くに行って、

そう言ってやりたいのに、
体が動かない。




小さい頃たった一人で居た、
咲の心が見えたようだった。







―もっと頑張らなきゃ―

―私がもっとみんなの役に立てば―

―みんな、私の事を認めてくれる―

―傍に居てくれるはず...―






ガキん時に一度だけ見た、
咲の心の奥。

まだ、続いているんだと思った。

「っやってやるんだ...
弱ってなんか...居られるもんか。
私が倒さなきゃ、いけないんだ。」

立ち上がって、空を見つめる咲。

「!?」

「我は、陰陽道を司る、
聖林の姫なり。
この命に代え燈兜を滅する。
我を知りゆく
天の者よ。
そなたも力を...祈りを我に。
みなの力...無駄にはせぬ...」

聞いたことのない、術言。


いや、術じゃない。
決意のような、そんな言葉。



咲が言っている最中にも、
咲の力が高まっていくのがわかる。

「!!」

咲の力じゃない、
たくさんの、想いや力が、集まっていく。

咲を囲む様に渦を巻いた。

まっすぐにおろした咲の髪が撒き上がる。




ふと、
聖林家の姫としての、
『正装』をした咲に見えた。






「...これが...咲...なのか...?」
思わず声が出た。

「...聖林の..姫...。」
咲の覚悟が、
姫としての覚悟が、見えた気がした。

      翔太side end