「もう...むり...」

、
体を、声を、震わせて。



みんなに、
見せるわけにはいかない姿を、
隠している姫の弱さを、演じろ。


弱いけど頑張っている健気な女の子。
それを印象づけろ。






「何で...
....っこわいよ...」



ほんとは、怖がってなんか居られない。
生きるか死ぬかの戦いで怖がってたりなんかしたら
すぐ死ぬ。
姫は、私。

そんな甘ったれたこと言ってらんない。





私が、
しっかりしなきゃいけない。

いざとなれば
私の命を捨ててでも。
私は姫としての責務を果たさなくてはいけない。








「何で、こんな弱いの...」

「何で...！
何で、こんな...
みんなだって頑張ってるのに...！」


そうやって、
自分を責める悲劇のヒロイン。



そんなこと言ってる間はまだ頑張れるってこと。
甘ったれてても
周りからは責任を果たすよう責められるのは
変わらないのにね。

バッカみたい。







……例えそれが表面だけだとしても。
一部の人だけだとしても。

私は信用される立場にいる。
責任を果たす立場にいる。


私はそれにこたえなきゃ。












「っやってやるんだ...
弱ってなんか...居られるもんか。
私が倒さなきゃ、いけないんだ。」

立ち上がって空を見る。

「...っ」


こんなキレイゴト、思ってなんかいないけど。
悲劇のヒロインなんて反吐が出そうだけど。











...私が、ホントに思ってること。
自分の責任も、立場もわかってる。
覚悟もしてる。

その、覚悟の言葉を。

おじいちゃん…お祖父様に、
教えていただいた言葉を。

自分の心を、覚悟を、命を……




「...
我は、陰陽道を司る、聖林の姫なり。
この命に代え、燈兜を滅する。
我を知りゆく天の者よ。
そなたも力を...祈りを我に。
皆の力...無駄にはせぬ...」


コトバを、唱える。


天のみんなに、
届くように。

私の周りには
私と、天のみんなの魂気が渦巻き、
私の髪を巻きあげていた＿＿