スゥ...と息を吸って
扉に手を伸ばす。



トントン

「すみません。転校してきた香林です。」

そう言って耳を澄ます。

「どうぞ。」

男の人の声が聞こえた。



……ん?

なにか引っ掛かった気がする。



そう思いながら
扉を引いた。


「失礼します。...!?」

「よっ、咲!久しぶり!」

「亮ちゃん!?なんで!?」


亮ちゃんこと、
谷崎 亮は、私のいとこ。
タニザキ リョウ


私の力を知っている、
数少ない人の1人。


まさかとは思っていたけど、
やっぱりそうか……

亮ちゃんの前でのキャラクターで
瞬時に反応する。

「だって俺、理事長だもん。」

私の驚いているフリの最中にも
亮ちゃんはそう言って笑った




「知ってる人がいてよかったー。
不安だったんだよね。」

そう言って息を吐く。



亮ちゃんの前でのキャラクター……
一族の知り合いの前では
しっかり者の実力者であり、
素では感情の起伏をよく見せる女子……




「そうなのか?あ、担任呼ぶな。」


そう言って
奥の壁に取り付けられている
機械に向かった亮ちゃん。



―ピンポンパンポン
 谷崎先生、谷崎先生。
 今すぐに理事長室へお越しください。
 
 緊急ですのでお急ぎください。
 ピンポンパンポン―