俺はただ、見ているだけしかできなかった。

 式場のチャペルで、今まさに愛を誓おうとしているアイツと、おまえ。

 アイツも、おまえも、俺には大切。でも、心はそうはいかない。

 純白のウェディングドレスを着たおまえは、世界で一番綺麗だ。
 愛なんて誓うんじゃねえよ。俺にしろよ。

 本当は俺が好きなんだろ。なあ、俺と生きてくれよ。

 チャペルを出て、祝福の声を浴びせられて、照れくさそうに佇むアイツ、とおまえ。

 綺麗だ。綺麗だよ。愛してる、愛してるんだ。

 ブーケが空を舞う。そして、何故かそれは俺の胸に舞い込んだ。

 顔を上げた。おまえと目が合う。なんだよ、なんて顔してんだよ。おまえが望んだことだろ。
 そんな顔してたら、今すぐさらってくぞ。

 横で物欲しそうにしていた女にブーケを渡し、今できる精一杯の笑顔でおまえを見つめる。

 それを見ておまえも笑う。いつもの、俺の好きな顔。

 やっぱり俺、おまえじゃないとだめだ。
 なあ、頼むから幸せになってくれよ。俺の入り込む余地もないほど、幸せになってくれ。
 でないと、俺……


 純白のウェディングドレスが、太陽に反射して、きらびやかに輝いていた。