きっと来るはずなんてない。そんなことはわかってる。

「ごめん、今彼女といるんだ」

電話越しに私から彼を奪った女の声が微かに聞こえた。

「ううん、少し酔ってたみたいだから気にしないで」

彼に寂しさを悟られないよう電話を切った。

本当は泣きたくてたまらないのに…。


電話を切ると、力が抜けたのか急に眠気が襲ってきた。

床に寝転がり、窓越しに月を見上げる。


今夜は眠ろう。
月を彼だと思いながら。

あの月のように、あたしの心も満ちてゆく…

涙でぼやけて、欠けた未完成の月が満ち足りて見えた。