―まもなく、三番線に、通過列車が参ります。


 ああ、世界はこんなにも美しいものだったのね。

 初めて、夫に内緒でエステに行き、好きなものを食べ、欲しいものを欲しいだけ買った。

 全身痣だらけでも、エステティシャンの子がどんな目つきで私を見ようと、知ったことじゃない。

 楽しくて、楽しくて、こんなことならもっと前にやっておけばよかった。

―危険ですので、白線の内側にお下がりください

 持ちきれないくらいの荷物を抱えて、二、三歩後ろに下がる。

 そこから、勢いよくプラットフォームのアスファルトを駆ける。

 さようなら、サヨウナラ。
 美しい世界。
 今日という日々。
 愛すべき夫。


 電車が、駅を通過しようとものすごいスピードで向かってくる。
 同時に、白線を越えた。

 今日買った、無数のアクセサリーが、祝杯を挙げるように、キラキラと宙を舞っていた。