愛とか恋とか嫁だとか。

咲子の手をぎゅっとつなぐ。


「1人で遠くへ行っちゃ駄目よ」


と、言おうとしたけれど、咲子が出てきた茂みは砂場のすぐ近くで。


どうやら、ケーキ作りに使う葉っぱを探しに行っていただけのことらしく。


あたしは、やっとひとつ大きな息をついて、気持ちを落ち着けた。


「ママ、どーちたのー?」


その柔らかい頬を指でなぞって、


「ごめんね」


つぶやくあたし。


「もーすぐ、ごはん?」


あ、と時計に目をやると、もうすぐ12時で。


「そだね、おうち、帰ろっか」



手を繋いで帰ることにする。


『あの人だあれ』と聞かれたら、なんて答えようと考えていたのに、咲子はオムライスが食べたい、アイスも食べたいといった話をご機嫌でしているばかりだった。