愛とか恋とか嫁だとか。

こういう時に、アツアツでラブラブだった恋人期間の思い出があれば、なんとかなるんだろうか。


……いや。逆に虚しくなるのかな?


あんなにあたしを見てくれたのに、とか??



「ママー、これーーーー」


咲子の声でハッと我に帰る。


手には空っぽのプラスチックのコップ。


咲子のお気に入りのウサギちゃんのイラスト入りだ。


あ、と気づくと、部屋に敷いたラグマットの真ん中が、オレンジ色に滲んでいる。


「どうして、そっちへ持っていったの!!!」


どうやら、ダイニングテーブルからジュースの入ったコップを運びだし、こぼしたようだ。



『子育て中は、おしゃれなインテリアとか根こそぎ諦めるようだよねー』



いつ聞いたのか、誰か友達らしき声が脳内で再生される。