愛とか恋とか嫁だとか。

だけど、同時に。


『こんなはずじゃなかった』


またあの言葉がぽつんと浮かぶ。


稼いだお金を、自分を磨く為だけに使えたあの頃。


自分で働かなくても、そういう生活が手に入るはずだった。


だって、そのために自分を磨いていたんだから。

大きい企業の社長と、付き合ったこともある。


成功している青年実業家、と呼ばれる男と婚約直前までいったこともある。




視界にボサボサの髪の毛が映り込む。


『流行っている』から『あえての黒髪』なのではなくて。


染めにいく時間もお金もないことで、

自分の髪の毛なんて構っていられる状況じゃないことで、

結果としてそうなってしまった、手入れのしていない、伸ばしっぱなしの黒髪。