朝がやってきた…
日だまりのいい匂いがする…

「桜ー起きなさいよー。」
お母さんが叫んで、私は目を覚ました。

「はーい。」
そう返事をして、体を起こした。

今日は、入学式だ。
「おはよー…」
まだ寝ぼけてる私は、気のない返事でお母さんとお父さんに挨拶した。

「もー、しっかりしなさいよ‼」
「休みボケかー?」

そんな二人の声が飛び交う。
「早く朝ごはん食べちゃって、支度しなさいよ、入学式でしょ。」

「うん❗楽しみだな、どんな学校かな?」

「どこも一緒だよ…」私の言葉にお父さんはそう言った。

「お父さん、自分の娘が嫁にいくみたいな言い方して、心配してるのよ。」

「心配などしてない、勝手なこと言うな」

その間に、私は朝ごはんを食べて、支度をはじめた。

「いってきまーす」 言い合っている二人に聞こえるように、大声で言った。

そよそよと、春風が頬を撫でるように、 優しく吹いた。

待ちに待った、入学式!
今日から、高校1年生!でもって、私が通う高校は、名門私立聖十字学園。

車で片道二時間、誰も知り合いがいない
この学園で、想いっきり青春しちゃうもんね!


…………………………………………………………五時間後。



「ここどこ?」 迷子。

(いやいや、この私が迷子?そんなはずはない、もう一度よく考えて………………………)


私は、地図を広げる。

わかんない。ここがどこなのか、さっぱりわかんない。

学園の敷地内ではある。それは確か。
じゃあ、何で迷った?

第一体育館に行くはずだったのに。

「おっ?」私は目の前にある何かに気づいた。………あれは、ガラスの部屋?

そう言うしかないほど、でもとても、綺麗な場所。

ふと、中を覗くと、人影が見えた。

誰か、いる? 誰だろう?
はっ!もしかして、私と一緒で迷子!?
(いやいや、んなわけない。)

ん~。体育館の場所を聞くぐらいなら、できるよね。

きぃ、と静かにドアを開いた。


「誰?」

開けた瞬間、どこからか、声が聞こえた。

「ヒイ!」 思わず出てしまった声。

おそるおそる辺りを見渡す。

「こっちだ。」
瞬間、後ろから声が聞こえた。

「ひゃおう!」
我ながら、馬鹿らしい声が出た。

「なんだ。迷子か?」

「えっ?あっその………はい。」

「新入生?」 「はい」
私はしんみりと答えた。

その時、クスリと笑った、綺麗な男の人。

「おいで。案内してあげる。」

「えっ‼」

「? 迷子のままでいいの?」

「いっいいえ!お願いします‼」

「はーい。」

先輩だろうか、オチャメな人だ。と思った

それが、私と青春の出逢いだった。