「……何も言い返せませんでした」
「え?」
「誰かに奪われても仕方ないって」
「……」
「……」
私の片手首はまだ、久住君に掴まれたまま。
きゅうっと掴まれて、鼓動が速まる。
「俺、安西先生が好きです」
久住君の、ふわふわの髪の毛が揺れた。
それから、ちゅっと何かが口に触れる。
避ける隙なんてなかった。
だって、一瞬だった。
告白をされてから。
くいっと腕を引かれて、顔が近付いて、それはすぐの出来事だった。
口元を手で覆うと、私は目を何度も何度も瞬かせる。
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